もし摩擦がなかったら・・・。
例えば、摩擦を自由に制御する技術を手に入れ、急に摩擦をなくし
たとします。すると、山や丘は崩れて平地になろとして地面が動き
出します。織物の糸が解けて衣服がバラバラに解体され、釘やネ
ジで締め付けて造った建物は崩壊します。また電車や自動車や自
転車は動かせなくなり、もし動いていたら停まれなくなって走り続け
ます。もちろん人や動物の足の裏が滑って、歩くことさえできなくな
ります。
多くの場合、摩擦は抵抗力として世の中に不要なものと見なされて
いますが、実は摩擦があるからこそ、物と物が強固に結び付き、
また運動と停止が可能になるのです。しかし、現実の世界での物理
現象としての摩擦は、いつもは人目に触れることはないので、意識
にも上がらないのです。日ごろは空気の存在を意識しないのと同じ
ように、摩擦の恩恵と弊害について思い巡らすことはまずありませ
ん。このように摩擦は、何か問題が起きたときだけ話題になるような
縁の下の力持ちの技術なのです。 |